遺産分割協議が成立しないと、以下のような問題が発生します:
- 財産の処分ができない:不動産の売却や預貯金の解約ができず、相続財産が凍結された状態になります。
- 相続税の申告に影響:相続税の申告期限(相続開始から10ヶ月以内)までに分割が決まらない場合、法定相続分で仮申告を行う必要があり、特例が適用されないことがあります。
- 相続人間の関係悪化:感情的な対立が深まり、解決がさらに難しくなる可能性があります。
解決方法
遺産分割協議が成立しない場合、以下の手続きが考えられます。
1. 専門家の仲介を依頼
弁護士や司法書士などの専門家に仲介を依頼することで、冷静かつ法的な観点から話し合いを進めることができます。専門家が間に入ることで、感情的な対立を避け、スムーズな解決が期待できます。
2. 家庭裁判所への「遺産分割調停」の申立て
協議がまとまらない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。
- 調停の特徴:
- 調停委員が中立的な立場で相続人間の意見を調整し、合意を目指します。
- 当事者同士が直接顔を合わせる必要はなく、調停委員を介して話し合いが進められます。
- 申立ての手続き:
- 相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書を提出します。
- 必要書類として、被相続人の戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本、不動産の登記事項証明書などが求められます。
- 費用は、被相続人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手代が必要です。
- 調停の結果:
- 合意が成立した場合、調停調書が作成され、これに基づいて遺産分割を進めることができます。
- 合意が得られない場合、調停は不成立となり、自動的に「遺産分割審判」に移行します。
3. 家庭裁判所での「遺産分割審判」
調停が不成立となった場合、家庭裁判所が遺産分割の方法を決定する「遺産分割審判」に進みます。
- 審判の特徴:
- 裁判官が相続人の主張や提出された資料を基に、法的な判断を下します。
- 審判の結果には法的拘束力があり、相続人全員が従う必要があります。
- 審判の流れ:
- 各相続人が主張や証拠を提出し、裁判官が審理を行います。
- 必要に応じて証人尋問や追加資料の提出が求められることがあります。
- 最終的に裁判官が遺産分割の内容を決定します。
- 審判後の対応:
- 審判に不服がある場合、2週間以内に高等裁判所に「即時抗告」を申し立てることができます.
遺産分割協議をスムーズに進めるためのポイント
- 事前の準備:相続財産の内容や評価額を正確に把握し、資料を揃えておくことが重要です。
- 冷静な話し合い:感情的な対立を避け、法的な根拠に基づいた主張を行うことが求められます。
- 専門家の活用:弁護士や司法書士に相談することで、適切なアドバイスを受けることができます。
まとめ
遺産分割協議が成立しない場合、家庭裁判所での調停や審判を通じて解決を図ることができます。調停では話し合いによる合意を目指し、不成立の場合は審判で裁判官が分割方法を決定します。早期解決を目指すためには、専門家のサポートを受けながら、冷静かつ法的に適切な対応を心がけることが重要です。