相続税対策としてアパートを建築する方法は、多くの地主や資産家にとって有効な手段とされています。この方法は、相続財産の評価額を下げることで相続税を軽減できる仕組みに基づいています。しかし、メリットだけでなくリスクや注意点も存在するため、慎重な計画が必要です。本記事では、アパート建築が相続税対策になる理由とその注意点について解説します。
アパート建築が相続税対策になる理由
- 不動産評価額の低減
相続税の計算では、現金や預貯金はそのままの額で評価されますが、不動産は「路線価」や「固定資産税評価額」を基準に評価されるため、実際の市場価格(時価)よりも低くなります。例えば、1億円の現金をそのまま相続する場合は評価額が1億円ですが、同額でアパートを建築した場合、建物の評価額は建築費の50~70%程度に抑えられることがあります。 - 土地の評価額が下がる(貸家建付地の適用)
アパートを建てることで、その土地は「貸家建付地」として扱われます。貸家建付地は、自用地(更地)としての評価額から借地権割合や借家権割合を考慮して減額されるため、土地の評価額が大幅に下がります。例えば、借地権割合が60%、借家権割合が30%の場合、評価額は最大で20%程度減額されることがあります。 - 債務控除の活用
アパート建築のために金融機関から融資を受けた場合、その借入金の残高は相続財産から控除されます。これにより、課税対象となる財産の総額を減らすことが可能です。 - 小規模宅地等の特例
アパート経営を行っている土地には「小規模宅地等の特例」が適用される場合があります。この特例を利用すると、200㎡までの土地の評価額を50%減額することが可能です。ただし、適用には一定の条件があるため、事前に確認が必要です。
アパート建築の注意点とリスク
- 空室リスク
アパート経営では、空室が増えると家賃収入が減少するだけでなく、賃貸割合が低下するため、相続税評価額の減額効果も薄れる可能性があります。 - 経営コストの負担
アパート経営には、修繕費や管理費、固定資産税などのコストが発生します。これらの費用が家賃収入を上回る場合、赤字経営となるリスクがあります。 - 相続人間のトラブル
アパートは分割が難しい資産であるため、相続人間での意見の対立やトラブルが発生する可能性があります。遺産分割協議や遺言書の作成を通じて、事前に調整しておくことが重要です。 - 長期的なリスク
アパートの建物は年数が経つにつれて価値が下がります。また、ローン金利の変動や建物の老朽化による修繕費の増加など、長期的なリスクも考慮する必要があります。
まとめ
アパート建築は、相続税対策として非常に有効な手段ですが、経営リスクや相続人間の調整など、慎重に検討すべきポイントも多く存在します。節税効果を最大化するためには、専門家と相談しながら計画を立てることが重要です。また、相続税対策だけでなく、アパート経営そのものが収益性のある事業として成り立つかどうかも十分に検討する必要があります。