昭和34年(1959年)9月に日本を襲った伊勢湾台風。この時の被害は死者・行方不明者を合わせて5,098人を数え、紀伊半島から東海地方を中心に甚大な被害をもたらした。この伊勢湾台風が、日本において最大の台風被害といえるものであり、現在でも指標となっている。
被災後、三重県は災害復興事業として、津松坂港海岸の堤防を昭和38年(4年後)に完成させるが、月日は流れ、老朽化と高さ不足により今回の大規模な工事が進められた。平成4年(1992年)に香良洲から始まった工事が、ついに今年の春、栗真まで完成したわけだ。
ちなみに、この区間の工事は国直轄の港湾事業として堤防の整備が行われており、白塚や河芸は別工事として現在進行形で整備が進められている。
今回、新しい堤防における地震(津波)への有効性が気になったので一歩踏み込んで調べてみた。
三重県のホームページには、
【過去最大クラスの南海トラフ地震による沿岸評価点における20㎝津波到達時間及び最大津波高一覧表】
が掲載されている。県庁職員の方に教えていただいたデータである。(2014年データ)
ここから読み取れる数字として、
各評価点における最大津波高は概ね、
松阪市以北で3~4m、
明和町以南の伊勢湾内で5~6m、
熊野灘沿岸の大半で6m以上である。
津市の最大津波高は3.2~3.7mと計算されているのだが、
6mの堤防高があれば津波は怖くないのではと安直に考えてしまう。
志摩市や熊野市では、最大11mという数字が出てくるので、
伊勢湾内の内海と外海の違いの大きさに驚愕した。
(桑名や四日市まで行くと2m代まで数字は下がる)
一方で、南海トラフの巨大地震による津波高・浸水等【第二次報告】(平成24年8月、内閣府南海トラフ巨大地震モデル検討会作成)では、
最大津波高7mとされている。(※愛知県沖~三重県沖と室戸岬沖に大すべり域と超大すべり域を設定)
別の資料で、国土交通省中部地方整備局より津市の津波6mのデータもある。(2012年データ)
こちらのデータは津波7m(2018年記事)
条件が違うのか想定される数字の大きさの差に困惑する。
もう一つ着目したい点がある。
まず1枚目の下の図は、津波のハザードマップである。
そして、こちらが高潮のハザードマップである。
見比べてみると高潮のハザードマップのほうが被害が大きい可能性があるのだ。
ちなみに伊勢湾台風の際は、3.55mの高潮が発生。
三重県としては、高潮と津波であれば、高潮に水準を合わせて物事を考えているようだ。
いろいろ調べてみたが、新しい堤防になって更新された防災マップは
まだ世の中に出てきていないようである。
今回の工事が津市の被害を小さくしてくれることに期待したい。
※高潮とは、台風など強い低気圧が来襲すると、波が高くなると同時に海面の水位も上昇する現象。高潮も波の一種ですが、周期が数時間と非常に長いため、波というよりむしろ海の水位が全体的に上昇する現象となります。海水のボリュームがけた違いに大きいため、一旦浸水が始まると、低地には浸水被害が一気に広がることになります。
※日本の干潮差は約2mである。
※TPとは、東京湾平均海面(T.P.)のことである。日本の標高の基準となり、これを基に水準測量に用いられる日本水準原点(24.3900m)が決められている。
※大すべり域は、津波を評価するための断層モデルに使用する用語で、断層面のなかで大きく滑る地域をいう。その中でも特に大きく滑る領域を、超大すべり域という。断層面のその他の地域は、津波背景領域という。